(ヘブライ人への手紙4章15節)
毎年四旬節の第1主日にキリストが悪魔に誘惑された場面を読みます。聖マルコはキリストが荒れ野に導かれてサタンから誘惑を受けられた、と簡単に伝えています。悪魔(サタン)は堕落した天使で自分の傲慢を許さなかった主なる神を憎んでいます。
主なる神に直接害を与えるすべもないから、主が創られて大切にしている人間を主から引き離して地獄で永遠にその人間を苦しめることによって主なる神に復讐しようとしています。その悪魔は私たち人間の大敵です。キリストは悪魔の全ての仕業を滅ぼして人間を救うために来られました。特にご自分の受難と復活を通して罪と死を滅ぼして人間を救って下さいましたが、悪魔から誘惑を受けてそれを退けたことによって人間に悪魔の誘惑に打ち勝つ恵みを備えて下さいました。
ところで悪魔は自分が既に負かされたとわかっていながら憎しみに駆られてなお救い主キリストの恵みを拒むように人間を誘惑しています。その為に悪魔は人間を惑わして自分の欲望の虜になるようにそそのかしますが、今の情報時代ではもっと効率的に人間を惑わすことができます。巧みな嘘や欺きの話があっという間に世界中に広がります。だから現代に生きている私たちキリスト者はマスコミの報道を信じ込んではいけませんが、それは特にキリストとキリストの教えに関する報道の場合です。そしてマスコミを通して自分が世間的な考え方や価値観に染まらないように気を付ける必要があります。そう言えば四旬節の間の有益な断食の一つはテレビを見る時間を減らして聖書を読む時間を増やすことです。
人間が最大に惑わされたら偶像崇拝に陥ります。人間は人間が作ったものを拝んでそれに救いを求める、と聖書で言う愚かで悪の源になる行為です。現代人は彫刻のようなものをそんなに拝んでいませんが、現代に合うような偶像を持っています。例えば中には「科学崇拝」をしている人もいます。科学に最高の真理と救いを求めています。もっと最近の現象としていわゆる「AI」(人工知能)があります。具体的な問題解決のために使ったらそんなに問題はないでしょうが、コンピューターに過ぎない「AI」を人間より優れた知能を持っているものとしてみてしまったらやはり一種の偶像崇拝になります。
いずれにしてもよく祈って聖書に親しむキリスト者はそんなに惑わされないで、キリストの恵みによって誘惑を退けて、却ってキリストにもっと忠実に仕えるようになります。