4月の新着本の紹介です。
*悲しまないで、そして生きて -愛する死者からのメッセージ 鈴木秀子 グッドブックス
「愛はこの世だけで終わってしまうものではなくて、深い愛で結ばれた人たちは、生死を超えて、その愛を伝え合い、愛によってお互いを生かし合うーそういった絆のようなものが、人間の根底にはあるのではないでしょうか。それを人びとに気づかせ、愛に目覚めさせるように、死者たちは私たちのもとを訪れるのかもしれません。」(あとがきより)
死者と生者のあたたかい絆が、遺された人を救うという奇跡にも似た希望が、9つの実話によって、私たちのもとにも染み入るように届けられる。
*藍色の福音 若松英輔 講談社
遠藤周作をはじめ多くの作家と出会い、言葉と出会いながら、自らの軌跡と重ねて綴られる一冊。
第一章で「あとになってみると、あのときの出来事は、のちの日々の到来を告げ知らせていたと感じることはある。」と語り始められた言葉は、終章において「人生においてはしばしば、人が気の付かない場所で、何ものかによって、ある準備が施されているように思われる。」「悲しみは藍色をしている。愛のないところに悲しみはなく、人は、悲しむことによって愛との関係をつむぎ直す。そうであるなら、悲しみこそ、姿を変えたよろこびの知らせ(福音)なのではあるまいか。」へと見事に昇華されてゆく。
*治療文化論 中井久夫 岩波現代文庫
著名な精神科医、文筆家であるだけでなくカトリック信者でもあった著者は、何を病気とし、誰を治療者とし、何をもって治療とするのかに答えて曰く。「治療とはそれぞれのために心をこめて、そのひとだけの一品料理をつくろうとすることである。」私たちが言うところの「寄り添う」ことにも通じる姿勢ではないだろうか。読み進めていくうちに、人間理解への新たな視点が開いていく名著。