典礼コーナー 9

―「朗読奉仕」―

日本カトリック典礼委員会 石井祥裕(東京教区信徒)

―新しい「ミサの式次第」の実施に向けて―より

 

<信徒の朗読者の役割の意義>

ミサにおける聖書の第一朗読、第二朗読の奉仕に関しては「選任された朗読奉仕者」の奉仕職がある一方で、実際には各共同体それぞれの信徒が担当することがより一般的です。この場合の信徒の奉仕者は端的に「朗読者」と呼ばれます。ミサ典礼書の総則で「こうして、信者は神のことばの朗読を聞いて、聖書の快い生き生きとした感銘を心に受けることができる」と記されている奉仕職で、聖書朗読の役割の大切さがよく示されています。

 

 

 

<今回の式次第の変更による朗読者の所作とことば>

このたび、式次第が新たになる中で、朗読者に関する内容の変更はただ一点だけです。現行版では、朗読が終わった後、侍者が「神に感謝」と唱えるだけだったところを、今度は、朗読者が「神のみことば」と唱え、会衆が「神に感謝」と応唱するかたちになるという点です。「朗読の終わりを示すため、朗読者は手を合わせてはっきりと唱える。『神のみことば。』一同は応える。『神に感謝。』続いて、朗読者は聖書に一礼して席に戻る。一同は沈黙のうちに、神のことばを味わう。」

 

<聖書朗読は「神のことば」を告げる奉仕>

本文朗読の後に朗読者が「神のみことば」と唱えることによって、‶今、まさしく神のことばが告げられた〟という聖書朗読の本質が明確に示されることになります。このことは、本文朗読を始める前に朗読者が書名の告知をすることと深く結び付き、響き合っています。本文朗読の後で‶今、このように神のみことばが告げられました〟と宣言することで、聖書朗読の真の姿を朗読者自身が一貫して体現することになるのです。

 

「書かれたものとして伝えられた神のことばそのものによって、今もなお『神はその民に語る』」と言われるように、聖書朗読を通して、今、神は自ら語りかけてくださいます。そのようなみことばを伝えるための聖書朗読の仕方については、「聞き取れる声で、はっきりと、味わえるように読む朗読者の読み方が、朗読によって神のことばを集会に正しく伝えることになる」と指示されています。そのためには、何よりも朗読者自身が聖書本文を前もって読んで、神のことばを聴いて味わうという準備が求められることは言うまでもありません。

 

<すべての信者は神のことばの使者>

聖書朗読は、それ自体が神のことばを聴く奉仕であり、それを公に告げ知らせる奉仕です。この意味合いと責任を新たに意識化するきっかけを、今回の変更はもたらしてくれるのではないでしょうか。そうすることで、「すべてのキリスト信者は、霊による洗礼と堅信によって神のことばの使者となり、それを聞く恵みを受け、同じ神のことばを、少なくとも生活のあかしによって、教会と世界の中で告げ知らせなければならない」という使命のために、私たちは成長していくことができるでしょう。